そして、サッタ峠反対側の危なげな下りを過ぎ、平坦道を突き進む。
暗いせいか、走りにくい道ではないものの、いまひとつ速度は出ていない。
それをいいことに、少しずつ、私たちの会話はエスカレート。IQはもうずっと2なのである。
陥没乳首と手嶋純太の初キスの話はこのへんでしたような気がする。
PC3の直前は、おそらく「いちご海岸通り」とかそんな名前の、長い海沿いの平坦。
暗いし景色も変わらない。
とにかく先は長い。
このあたりから、虫さんがサドルに座れなくなっていた。
股ずれ、皮膚が擦り切れているらしく、ほぼダンシングでしか進めないらしい。
何とかPC3のセブンイレブンに飛び込んだが、ペースを上げるのはかなり厳しいということになった。
あれこれ塗ったり拭いたりしてみるも、かなり厳しい様子。
ここで、何も食べられない私は補給ゼリーを口に含むが、飲み込めず、袋に吐き出して捨ててしまった。
・PC3~通過チェック③~PC4
ここから、少し平坦を進んだだろうか。
ごくゆるめの登りを経て、次の通過チェックである「大正宇津之谷トンネル」へ向かう。
道の駅宇津の谷峠を通りすぎ、橋の裏の道のようなところへ入ると、すっかり暗くなる。
車通りがない登り基調、走りにくくはないのだが……。
トンネルに近づくにつれ、空気があやしい。虫さんが撮った写真が、月もないのに明るく発光している。
目当てのトンネルの真ん前まできたとき、目の前に白いものが現れた。
思いっきり、冬の息を吐き出したような白い気体。あまりにもはっきりと顔の前にあるので、ちょっと面喰ってしまった。
おそらくそばに水が流れているのだと思うが、ものすごーーく騒がしい。音の鳴り方が普通と違う。
クロ「ねえ、ここなんかやばい感じするんだけど」
虫さん「やばいよねえ」
じぇんさん「ほんとにそういうの無理だから!ねえ、こわいこわいこわい!むり!」
ざわざわするトンネルで、とりあえず通過チェックに写真を一枚。
このあとは少し下りもあったような?商業ホモ本ソムリエ(語彙力:低)じぇんさんが大活躍していたのは、このあたりだろう。このとき一度だけPC外のコンビニにトイレで寄らせてもらったが、この区間のアベレージがだだ下がり。
話に盛り上がりすぎたのかもしれない……。
車通りはまばらだが、きちんとした市街地に戻り、あまり見栄えの変わらない道を地道に進む。
やがて、主な話題となったのがFGO(フェイトグランドオーダー、流行りのアプリゲーム)である。
そこに出でくるマスコットキャラクターと博士のカップリングについて、ひとしきり語りあった。
クロ「フォウフォーーーウ!!!!フォウッ!!!!」
虫さん「フォーーーウ!」
じぇんさん「やめてお腹痛い」
夜道に響く、マスコットキャラクターの鳴き真似。
獣と人のホモカップリング……。
クロ「フォウフォーーーウ」
手嶋純太のストッキングを破りたい話は、どのタイミングでしたんだろうか。何かの萌え話に、夜間とは思えない元気ほどの取り戻すじぇんさん。
そんなこんなで、PC4のファミリーマートに辿りついたときには、貯金は10分あるかないかだった。
予定していたほぼ300km地点でのファミレス仮眠は、時間がないということで、その案はとりあえずナシに。
次のキューまでは30kmあるので、その間にイートインのあるコンビニで10分ほど仮眠することになった。
・PC4~そして、DNF
貯金はないが、寝ないのはあぶない。正直、ペースをこれ以上上げるのは今のところは難しそうだった。
虫さんの乗り方を見ても、あと300kmダンシングは難しいだろう。私自身は、ふつうに走ることはできても、気力は出せそうにない。
時間からいってかなり厳しいな、と感じていた。
バイカーがたむろしていないコンビニを見つけるのは難しく、結局くれたけインというホテルのすぐ近くのコンビニで10分仮眠。
止まってしまったら、私の内臓が半端なくやばい。仮眠明けの虫さんは寒気がしていて、体調が見るからに危なそうだった。
ここで軽く話しあい、「いけるところまでいきたい」というじぇんさんとはここで別れることにした。
次のPCまで間に合うかどうかがわからないが、走れそうなので、もう少し行ってみるとのこと。
ここで、私と虫さんはDNFし、走り出すじぇんさんを見送った。
眠気でふらついたり、車に突っ込みそうになったりしているところをこれまで見ているだけに、彼女の単独走に心配がないわけではない。が、ここ一番には強い人、多分行けるだろう。
近くてよかった……と、先ほど通り過ぎたビジネスホテルへのピットインを決めたが、コンビニを出た瞬間に吐いた。
何だかよくわからないが、内臓がもう駄目らしい。
何個も前のPCから、話す楽しさで気を紛らわしてはいたものの、紛らわしていたにすぎなかったのだろう。それでも、3人でいることによって救いがあって、本当にそれは幸せだった。
ビジネスホテルのくれたけインで、部屋に自転車を上げさせてもらい、アミノ酸をとったり、風呂に入ったりしたが、もやもやした気持ちが晴れることはなく、胃も痛すぎてほとんど眠れなかった。
何はともあれ、今年のブルベ、そしてSRへのチャレンジは果たされずに終わったのだった。
◆
次の日は、うだうだしてから洗濯したり、ホテルの朝食を食べたり、虫さんと反省会をしてみたり。
お世話になっている方に拾っていただき、ご飯でなぐさめてもらい、あれやこれやと美味しいものを食べ、安心の眠りにつくことができた。
胃がダメになると気力がなくなる。長く走るときには気力がほぼすべてなところがあるタイプなので、たかだか30kmが永遠に感じていた時点で、とても600kmなんて走れるわけなかったなあという感じ。
3人でゴールできたら御の字、というところだったので、パワフルな魂ではなかった。内臓が博打すぎて、頭の中では、今のところ600kmの完走のイメージはまったくもってない。
(しいていうなら、食べれなくなっても走れるのは24時間くらいまでのような気がする)
お腹を満たしてもらった帰路で、一人後半戦を走り、Sさんに拾ってもらって600km完走したじぇんさんの一報を聞いて一安心。
今シーズンのブルベは、これで正式に幕を閉じたのだった。
……と、終了直後に大部分書いた記事なのだが、時間がたってからの気づきやありがたいアドバイスや自分なりの学びは、まとめの機会があればまた後日!!
今日もお疲れ様でした!(静岡おでん美味)