人生初のMTB走行。
それは、24時間耐久レースという狂乱の宴の中で行われた。
◆
伊豆・修善寺にあるサイクルスポーツセンター。
ここを貸し切っておこなわれるのが、
「A&F 24時間耐久 MTB CUP」である。
我らがじぇんさんを中心としたさまざまなご縁で、今回このレースに参加させてもらえることになった。
参加とはいっても、チームでアウトドアを楽しみつつ盛りあがることを中心とした、エンジョイ枠である。
MTBといえば、かつて同じCSCで、ほんの30分ほどだけレンタルしたことがあった。常設されたコースに挑んだものの、整備不良のMTBは変速もできず、ブレーキも微妙。
というわけで、きちんとMTBに乗るのは、今回が初めてになる。
そんなクソ初心者にとって、雪や雨にさらされたコースは、とんでもない難易度で挑んでくるのだった……。
・前夜祭
11月25日夜、仕事帰りに虫さんと合流して、小田原を目指す。
今回、MTBや現地で過ごすためのテント等はすべてチームの皆さまに借りるため、自分たちの荷物だけで現地へ向かうことができた。
小田原駅前のネットカフェで風呂を済ませ、じぇんさんの車に拾ってもらう。
じぇんさん「山伏峠がチェーン規制で詰んだ」
夕方に届いたこのラインは、のっけからブログのネタか???と思わざるを得ない。
前日の季節外れの積雪は、CSCに行くための近道を、ことごとく閉鎖していた。
仕方がないので、距離は伸びるが亀石峠をゆるゆると登っていく。
夜の峠を車で越えながら、「こんな明かりのないところでヒルクライムするやつは気がおかしい」と、ブルベでは避けて通れない経験を呪った。
そして、23時頃にはCSC内のピットエリアへ。
すでに大型のテントとキッチン、寝るための小型テントなどはばっちり設営が完了していた。
お世話になる方々に挨拶をしてまわり、駆けつけディナータイムで水餃子をいただく。
遅めの晩御飯、外気温は2℃。
しかし、あっつあつの水餃子にお好みの薬味をかけていただく一杯は、胃袋を最高にしあわせにしてくれた。
梅酒のお湯割りで晩酌しながら、深夜2時頃まで星空を堪能した。
虫さん、じぇんさんと女3人みちみちになってテントで就寝。
テントに敷布団、寝袋、掛け布団で人がぎゅうぎゅうになって寝ると、コタツで寝るくらいあたたかいということを知った……。
そして4時間後。
閉じ込められた密室(テント)
襲いくる尿意……
結局、明け方にトイレに這い出し、その後8時まで二度寝を決めた。
・10月26日、24時間耐久レース当日
ずいぶん明るく、会場がにぎやかになったところで起きだし、当日入りのチームの方々にご挨拶。
じぇんさんと2人、ありがたーく朝イチのコーヒーを楽しみ、ぜいたくに過ごした。
試走の準備とばかりにノロノロと化粧をし、冬用のウェアに着替え、ブランチをいただく。
いなり寿司と、鶏ごぼううどんのあたたかさが、じんわり染みわたる。
夜に雨予報が出ているのが嘘に思えるほど、当日の日中は快晴だった。
・いざ試走へ
全長約5km弱。
常設コースとは違う、起伏に富んだ今回のコース。
テクニカルなカーブも、予期せぬ深い水たまりも、舗装路の長い登り坂ゾーンも待ち受けている。
用意していただいたMTBとともに、虫さん、じぇんさんと揃っていざ出発!
今回、試走を含め、ほぼすべての周回でお世話になったのは、抜群のティーチング力を誇るS先生だった。
3人「(野太い声)!!!!」
走りだしすぐから、うるさいうるさい。
虫さんは滑りはしたものの転んでいないようだが、私といいじぇんさんといい、見事に転ぶ。
木の根ですべり、ミゾにハマリ、ぬかるみに落ち、初回だからと冒険をしないで危ない下りでは自転車から降りているというのにこの有り様。
先生の懇切丁寧な指導を受けているにもかかわず、絶叫と半ギレのデスボイスは止まらない。
じぇんさんにいたっては崖側へ頭からコースアウト。
起き上がれなくなり、同行していたソロ参加(同ピット)の神・Mさんに助け起こしてもらっていた。
それでも何とか一周を終え、息も絶え絶え。
MTBは距離に関わらず運動量が多いというS先生の御言葉が染み渡るのだった。
・絶望のぼっち周回
その後は、3人でおそろいの靴下を買ってみたり、
合わないサイズの靴を交換してもらったり、第一走者をつとめるチームの皆さんを応援したりした。
ここから24時間耐久ソロの人は走り出すのか……と、その気がふれた取り組みに拝み倒すばかり。
その後、自分の番が回ってきたのでオロオロと出走するが、
これがまあ、
走れない。
試走と違ってうしろにたくさん人がいるので、止まれず、降りられず、スピードも出せずでひどく転ぶ。
試走よりもずっと乗れなくなっていた。
もう後ろに人がいることで、巻き込んでしまったらどうしようとただただ恐怖。
広い道なら抜いてもらうのだが、道幅が狭いところでは顔を青くしてよろよろ行くしかなかった。
クロ「むりです……あと自転車から変な音がします……」
ピットに戻り、たった一周で泣きついた。
転びすぎて、ディスクブレーキのあたりがどうにかなっていたらしい。
怖すぎるので、日中は戦線を離脱し、晩御飯の仕込みの手伝いをすることにした。
②につづく