・MTBの神髄はナイトライドにあり?
あちこちのピットから夕食の準備の匂いが立ち上ってくる頃。
すっかり意気消沈した私も、とりあえず先生に連れられ、虫さん、じぇんさんと再びコースに出ることに。
16時からは前灯2灯とリアライトが必須になるため、しっかりと装備を整えていざ出発!
走り出してすぐに日も暮れはじめたため、道はライトで照らしたところと、前を走る人のリアが目印だ。
ここで、私はS先生の凄まじさを知る。
コースはほぼ見えていないに等しいが、そのために、先生のライン通りに走れば、意外や意外、乗り越えられる場所が増えていく。
ヘアピンカーブやひどいぬかるみは降りてやりすごすが、明らかに昼間よりも乗車時間が長くなっていることは確かだった。
じぇんさん「夜も走ろうよ~~!夜のCSCを走れる機会なんてめったにないんだからさ~~」
虫さん「私MTB好き!スキーに似てる!」
走行中は低い雄叫びばかりの2人も、意気揚々と周回を終えた。
山道の本当の闇は、まだまだこれからである。
24耐真っただ中のMさんにお供え物をしたり、泥で動かなくなった自転車を洗浄したり、
おすすめのオイル談義に花を咲かせたり、ダウンヒル動画で死にそうになったりしながら、素敵なディナータイムは更けていく。
じんわり煮込みハンバーグのうまみに、敷かれたコーンバターライスが食欲を刺激する。
ポテトサラダやペンネ、とろけるガトーショコラにチーズケーキのメープルナッツ添えと、カロリーモンスターたちは誘惑をやめない。
クロ「飲みて~~~~」
赤ワインが手招きをしていたが、飲んだ人はナイトライドには参加できなくなるので、ここでぐっと我慢をした。
お腹を満たしたところで、今晩最後の周回に出る。
じぇんさん「登れた!!」
虫さん「ああああああ、足着いた!!」
数々のセクションで、できただのできなかっただの言い合いつつ、真っ暗闇を走行する。
レース中の人たちがくれば積極的に道を譲り、自分たちは自分たちのペースを守って走行。
人も減ってきているためか、走りやすく、アットホームでとてもいい雰囲気だった。
コースにはサイリウムがいくつか吊るされ、難易度の高いところには監視のスタッフさんたちがいるが、基本的には自分のライト頼りである。
とにかく、ライトのところ以外は何も見えない。
先生曰く、「昼間走ったコースをトレースする」のだという。
病的に方向音痴の私には、そんな技術はついていない。
しかし。
見えないことで、視覚からくる「こわい」という情報はほとんどなくなった。
見えないからこそ、ただ示されたライン通りに走れる。余分な情報がないからこそ、うまく力を抜いて挑める気がした。
そんな大発見にちょっと感動しつつ、結局ナイトライドは2周連続、それも周回速度は大幅短縮となった。
・真打、ゆたそさん登場
サイテルで時間限定の入浴を済ませると、時刻は23時。
ここで、一仕事終えたゆたそさんが、じぇんさんのお迎えによって合流した。
ひとっ風呂浴びたあとは、もう走らないと心に決めているので、ウキウキの飲み会タイムである。
夜のハイカロリーは何を食べても美味い。
おすすめの飲み物は、梅酒+赤ワインのお湯割りだ。フルーティーであたたかく、グビグビいける。
おやすみじぇんさん
〜大好きなクルトンを抱えて〜
この夜は、例のテントにさらにみっちりと女4人で就寝した。
・11月27日、雨上がりの最終日
夜中に二度ほどテントを、雨が激しく叩く音がした。
7時すぎに目を覚ますと、夜中走ったらしい人たちが、
「もう走りに行きたくない」
と行っているほどだった。
ホームストレートを見ると、各々の車体が引きずってきたらしい泥。
昨晩のひどい雨で、コースはとても私たちのような初心者は走れないレベルになっているらしい。
最終日の走行は安全第一と諦めて、朝ごはんをいただく。
親子丼に舌鼓を打っていると、魂が半分くらい抜けかけたような、Mさんがピットに戻ってきた。
その泥汚れの凄まじさが、この夜の過酷さを物語る。
食事をしてもらい、その隙に自転車の泥を洗い落とし、Mさんは再びコースへと戻った。
ブルベの逸話も聞いていたために、Mさんを神様と呼んでいたが、本当に神様になって身体が透明になってしまいそうな雰囲気である。
食事後に走り出すメンバーを、沿道の観客のごとく応援し、女4人は買い物を楽しむことにした。
コーヒーを飲み、レース参加の幼女に遊んでもらい、片づけを手伝い、応援し……。
大充実で、ついにレースは24時間の終了時刻を迎えた。
・大満足のMTBレース
こうして、無事に2泊3日のMTBレースは終幕を迎えた。
副賞が軒並み豪華な表彰式と、おみやげたっぷりのピットの片づけ、泥まみれのバイクの洗浄と、楽しいことが満載だった。
今回はただただ皆さまのご厚意に甘え、面倒を見てもらうばかりだったが、本当にいい経験になった。
そして、間違いなくMTBには向いてないと思う。
それでもあたたかい人たちとのご縁に恵まれ、ついMTBが欲しくなってしまいそうな自分がいるのであった。
帰り道は、ゆたそさんを熱海まで送るために、かつて死を体感した山伏峠を下る。
100km自走して売り切れた脚で登った山伏峠のつらさは、今でも忘れない。
なぜ、1年以上前の、今よりさらにクソ脚の頃に山伏峠を登ったのか、今回下ってみていっそう分からなくなった。
今日もお疲れ様でした!(24耐は神々の宴)