・PC1~笹子峠、大幡峠~PC2
PC1を出発してすぐ、フルーツラインという農道のアップダウンを越えていく。気温の高さと、ジェットコースターのような視覚効果がなかなかに堪える。
このPC1~PC2の区間は峠越えが2回含まれていて、区間距離は45kmほど。正念場ではないだろうか。
フルーツラインを越え、交通量の多い登り基調の国道20号を登りきり、笹子峠へ。
約7km、平均勾配は6%ほどだ。
この笹子峠が結構クセモノである。
峠のスペックどうこうというよりも、次のPCのクローズ時間や、200mおきに残りの距離を示す謎の看板が、妙にあせらせる。
けっして嫌いな峠ではないのだが……。一般ローディーさんに励まされつつ、三人でペースを合わせて頂上を目指す。
ちらほら、後続の参加者さんと一緒になり、最後の看板「残り400m」
クロ「え?400m?待って、上にガードレールあるよ?」
じぇんさん「あ~~……あと2つくらいカーブあるね」
最後の400mで、白いガードレールが頭上に2つづらくらい見えたときは、いよいよ殺意極まるといった感じであった。
だが、頂上には、AJ西東京のスタッフさんが待っていてくれた。ブリーフィングで聞いていた通りの撮影スポット、加えてシークレットだったらしい。
笹子トンネルの前で、記念撮影と抜き打ちチェックを受ける。
時間のあせりが募るなか、まだ大丈夫ですか?と弱々しく問うと、
スタッフさん「全然大丈夫!ここから次の登りまでは全部下りだから、むしろ余裕だよ」
と本当にやさしい笑顔で教えてくれた。気持ちがあたたまり、随分と楽になる。
そして、有名な参加者さんで、最後尾のペースメーカーとなりうる人の存在を教えてもらい、励まされて再出発。
落ち葉の吹き溜まりや毎カーブごとに待ち受けるグレーチングに注意しながら、下りで距離を稼いでいく。
この区間最後の登りとなる大幡峠は、距離はそこまでないので、あせりすぎないようにしっかりとこなして、PC2へと飛び込んだ。
147.1km地点、クローズまでは23分。
ドキドキのこの貯金は、出発時にはなんと8分になっている。
ここからは雛鶴峠の登りを含むとはいえ、4時間で44km。勝機は見えてきた。
あらびきフランクと魚肉ソーセージで空腹を満たし、メダリストドリンクにいい加減口が飽きてきたので、午後ティー無糖を流し込む。
毎回感じるのだが、ブルベの終盤になるにつれ、ゼリーや栄養ドリンクの味に飽きがくるのが苦痛で仕方がない。
じつはここで補給を失敗しているのだが……、それは雛鶴峠に入ってから気づくのだった。
・PC2~雛鶴峠、藤野の起伏~ゴール
ゆるい登り基調の道を進んですぐ、雛鶴峠はやってくる。
というか、どこからが峠なのかいまいち分からないが、平均勾配は5%以下だろうか。
ゆったり登っていけるくらいの道なのだが、ここで胃の不調。
空腹を感じPCで食べたものたちが、エネルギーになるのがなかなか遅い。
足が回らず、ついに売り切れたか……と絶望しながら、息も絶え絶えに新雛鶴トンネル手前の頂上へ。
クロ「ちょっとタイム!補給させて!」
ここでBCAAゼリーを摂取すると、あっさり回復。普通の食事をしてすぐに登りだすと、消化に体力を奪われ苦労することになる。
ていうか、魚肉ソーセージとあらびきフランクってなんだ。完全にチョイスミス!
あとは本当に、感謝しかないほどの長い長い下り基調。
田舎道を、夕暮れとともに走り抜ける。
このへんになると景色を楽しむ余裕もできて、ぽっかり浮かぶ大きな大きな満月に全員で感嘆。
手づかみできそうなまるまるとした月は、はしゃぐほどきれいだった。
さて、とっぷりと日も暮れたところで、最後の足削りゾーン。藤野の起伏だ。
何を思ってこのルートを組んだのか、藤野の起伏は車がほとんどこない代わりに、外灯もほとんどない。
たまーーーーーに、オレンジ色の灯りがぽつんとあるくらいである。
しかも、結構な長さの登りと下りが計4回。
完全な山道のため、ガードレールの外は深い谷である。
9月に参加した箱根200で、volt1600の威力に感銘を受けたことは記憶に新しい。私と虫さんは、早速導入したvolt1600で、この深い深い闇を煌々と照らした。
クロ「何これ、ウケる」
虫さん「クマに襲われても気づかないだろうな……」
じぇんさん「これが本来のブルベなんじゃないかな?本場のフランスとか、外灯もあまりないっていうしさ」
じぇんさんだけ、ここにきて悟りを開く。
本場かどうかはよく分からないが、集中がきれがちな最後の30kmを、この暗闇によってダレずに走り切れたのはよかったと思う。
そこまできつい登りや下りではないので、ドキドキしつつもそこそこ楽しめた。
この謎の起伏を越え、下って大通りにぶつかると、そこは観覧車の輝く相模湖プレジャーフォレストだ。
ほかの参加者数名と出会い、ゴールまでの明るい道をトレインになって進んでいく。
最終的に9名ほどの集団になって、ゴール地点のローソンへと辿り着いた。
30分ほど貯金を取り戻し、獲得標高4000mへのチャレンジは、無事に時間内完走となったのである。
・ゴール受付とお疲れ様の集い
ゴールでは、Wさんが差し入れを買って待っていてくれた。
覚えていてくれただけでもありがたかったのに、ご褒美までもらってしまって、頭が上がらない。
たとえ息も絶え絶えに完走しても、辿り着いただけであたたかく迎えてもらえるのだから、ブルベは本当にすごいイベントだ。
このままダラダラしていたくなる身体に鞭を打って、ゴール申請地点のケルビム(町田市にある、オーダーフレームのショップ)へと向かう。
AJ西東京の今年最後のブルベということもあってか、そこにはたくさんの人が留まっていた。
レシートとブルベカードを確認してもらい、申請完了。
諸先輩方とお話しさせてもらいつつ、提供してもらったあったかいココアを飲み、お菓子をつまむ。
AJ西東京のこの空気は、今まで参加したなかで一番ともいえるアットホームさだ。
ブルベのやばい人「ブルベは座ってればいいわけじゃん?登りなんてのは貯金だから」
最後に聞いたこの名言に、ブルベの世界の深さを知るのであった……。
・まとめ
今回の反省点……
登りだけでなく、下りもリサーチしておくこと。気持ちに余裕を持つこと。
巻き返しのタイミングを把握して、同行者をあせらせずにタイムマネジメントができたら最高だ。
ちなみにブルベ参加の1週間前に靴が壊れ、お世話になっている方からの急遽の購入で事なきを得たのだが、新品でガチガチかつ、これまでより小さめの靴は、足を負傷させるほどだった。
とはいえ、完走できて、本当によかった。
今日もお疲れ様でした!(帰り道のカツ丼がうまい)